皆様こんにちは。
札幌市議会議員ふじわら広昭です。
今回は札幌市が検討しています新たな公共交通システムについてです。
1「新たな公共交通システムの概要」
〈対象エリア〉
市内中心部からJR苗穂駅周辺(すすきの路面電車乗降場付近~大通~新幹線東口~サッポロファクトリー~JR苗穂駅)を対象区域としています。
〈使用する車両〉
- 全長18mの連接バス(定員120名)
- 中型車両(定員29名以下)のマイクロバス
- 小型車両(定員10名以下)のジャンボタクシー
〈使用燃料〉
FCV(燃料電池車両)は水素と酸素の化学反応によって発電し、モーターを駆動させます。
〈デマンドシステムの導入〉
小型車両を対象にAIを活用して予約に応じて運行する交通システム(運行エリア内の乗降場をあらかじめ決めて事前に利用予約する)の導入を検討しています。
2「運行する車両」
- 道路上を走行する車両は軌道法及び道路運送法に基づき検討します。
- 札幌市はレールや架線を必要としない道路運送法に基づく事業として検討しています。
3「道路運送法のどの適用条項で運行」するのか
道路運送法が定める運行形体は同法第4条、第21条、第43条、第78条があります。
① 第4条には
- 一般乗合旅客自動車運送事業(原則定員11人以上の車両)は路線バスや区域運行のデマンドバス等が該当します。
- 一般貸切旅客自動車運送事業(定員11人以上の車両)は貸切バスが該当します。
- 一般乗用旅客自動車運送事業(定員10人以下の車両)はタクシーが該当します。
② 第21条には
- 乗合旅客の運用許可は自治体の要請による実証実験で貸切バス又はタクシーを活用した乗合運送が該当します。
③ 第43条には
- 特定旅客自動車運送事業はスクールバス、従業員送迎バス等が該当します。
④ 第78条2項には
- 自家用有償旅客運送はバス・タクシー等が運行されていない地域や過疎地域等において住民の日常生活や観光客の移動手段を確保するため、国土交通大臣または、地方公共団体の長の登録を受けた市町村やNPOが有償で運送でき、自治体からの運行委託も該当します。
以上のことから、連接バスは市内で路線バスを運行している会社、中型及び小型車両は市内のタクシー会社が委託先として想定されます。
4「今後の実証実験」について
- 2025年度は冬季の車両走行性能及びデマンドシステムの運用確認と水素利活用に向けた調査を予定しています。
- 2026年度はすすきの~大通~サッポロファクトリー~JR苗穂駅周辺の町内会等の協力と参加を頂き、乗客を含めた本格運行を想定したテスト運行を予定しています。
5「連接バス運転手の研修等」について
札幌市は、今年10月頃までに福岡市の民間バス会社が保有している連接バスを用いた市内主要バス会社の運転手(各社1~2名)の研修を約1週間程度予定しています。また、来年2月頃までに冬季の車両走行性能調査も行う予定です。
6「今後の課題」について
① 連接バスの水素燃料電池の展望
- 一般的な路線バス(全長12m)や乗用車の燃料電池は実用化されています。
- 連接バス(全長18m)のディーゼルエンジン車両は海外で商用化されていますが水素燃料電池車は国内外ともに開発途上です。
- 連接バスは車体重量が重いため、ディーゼルエンジン車両と比較すると水素燃料電池車はパワー不足が懸念されています。
- 上記の問題に対し、札幌市は「国内自動車メーカーが既に商用化しているハイブリッドエンジンを水素燃料電池車両への改造及び水素エンジンや水素合成燃料など新たな技術開発を注視している」と言っていますが、2030年度までの商用化に向けた技術開発は厳しい状況にあるといえます。
② 連接バスの購入と維持管理について
- 市内のバス会社は燃料費の高騰、利用者の減少、運転手不足により経営が非常に厳しい状況にあり、連接バス1台約1億円(海外のディーゼルエンジン車両)に対し水素燃料電池車(価格未定)が購入できるのか、それとも札幌市が必要台数全てを購入するのか等の課題があります。
- また、連接バスを点検、整備する時は3柱リフト(既存のバスは2柱リフト)の設置が必須となり、さらに積雪寒冷化で水素燃料電池車を維持するための車庫の設置費用が必要となり、この費用をどこが負担するかの課題があります。
③ 水素の製造等の課題について
- 現在、国内で製造されている水素の大半は製造工程でCO₂を排出しています。
- 水素燃料電池車はCO₂を排出しませんが、水素製造工程でCO₂を排出したのでは札幌市が進めているGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素社会の取組みと矛盾することになります。
私はこれからも市議会等で新たな公共交通システムをはじめ既存の路線バス等、公共交通の課題の改善・解決に向けてしっかり取組んでいく所存です。