2025年6月20日金曜日

札幌の今後の雪対策計画について

皆様こんにちは。
札幌市議会議員ふじわら広昭です。

今回は今後の札幌市雪対策計画についてです。


〈札幌市の年間累積降雪量〉

過去30年間の平均値は約5mです。

世界でも人口100万人以上の大都市で年間累積降雪量が約5mの都市は札幌市だけです。


〈札幌市の過去40年間の雪対策計画〉

札幌市は、これまで4次にわたり10年計画を策定し、除排雪作業を実施してきました。

①1991(H3)年策定の第1次計画「雪さっぽろ21計画」

同計画では、社会情勢として人口の増加や冬期における都市化の進展、道路管理延長の大幅な増加に対応するため除排雪のレベルアップを目指した計画を定め、

  1. 除雪水準の確立
  2. 下水道施設を活用した「流雪溝」・「融雪管」・「融雪槽」等の整備

を進めてきました。

②2000(H12)年策定の第2次計画「札幌市雪対策基本計画」

同計画では社会情勢として人口増加の減速、少子高齢化の兆候、環境対策としてのスパイクタイヤの使用禁止の法制化や市民ニーズ等を踏まえ、

  1. 雪さっぽろ21計画を継承した計画
  2. 環境への配慮
  3. 雪に関する情報共有体制の構築

などが新たに加わりました。

③2009(H21)年策定の第3次計画「札幌市冬のみちづくりプラン」

同計画における社会情勢として人口増加の減速、少子高齢化の進行、公共事業に対する投資額の減少等に伴う除排雪に携わる建設業の経営悪化、市民ニーズの多様化などを踏まえ、市民との協働による持続可能な雪対策を推進するために、

  1. 違法駐車、道路への雪出し等の冬の市民生活ルール確立
  2. 排雪量の抑制
  3. 夏と冬の道路管理一体化に向けた業務形態の見直し

など持続可能な雪対策を進める項目が加わりました。

④2018(H30)年策定の第4次計画「札幌市冬のみちづくりプラン2018」

同計画における社会情勢として近い将来、市内の人口が減少に転じることや除排雪業者を含めた働き方改革、除排雪に従事する年齢の高齢化と減少、除排雪予算の増大、町内会加入率の低下などを踏まえ安心・安全で持続可能な冬の道路環境を実現するために、

  1. ICTの活用
  2. 大雪に備えた除排雪体制の確保
  3. 凍結路面対策
  4. 雪処理施設の安定的・効果的な運用

などを重点施策と位置付けました。


〈札幌市の道路除排雪キロ数と予算〉

札幌市の昨年度の除雪予算は約280億円で、そのうち道路除雪費として約220億円(81%)、雪対策関係費(ロードヒーティング維持管理費、除雪機械等維持管理、雪対策施設整備等)で約50億円(19%)となっています。

今年度の予算は約285億円で、増額分はほとんどが人件費と燃料代の高騰です。

具体的には以下のとおりです。

  1. 札幌市が夏冬管理する道路管理延長は約5,600㎞のうち除雪計画延長は約5,500㎞(予算は約38億円)
  2. 歩道除雪は幅員2m以上の歩道約4,100㎞のうち約3,050㎞(予算は約9億円)
  3. 幹線道路等の排雪延長は約1,400㎞(予算は約77億円)
  4. 通学路の排雪延長は約270㎞
  5. 交差点の排雪箇所は16,255箇所
  6. 雪堆積場管理費82箇所(予算は約35億円)
  7. パートナーシップ排雪費(予算は約27億円)

〈除雪機械の保有状況〉

  1. 札幌市保有車(大型及び歩道用ロータリー車、グレーダ凍結防止剤散布車など)約500台
  2. 除雪事業者(建設業等)保有車(大型ロータリー車、除雪ドーザ、グレーダなど)約1,000台

〈パートナーシップ排雪等の新たな手法〉

  1. 札幌市は町内会のご協力を頂いて、パートナーシップ排雪の標準断面排雪量と地域支払い額を7割程度に抑えた3種類の手法を2017(H29)年から実証実験し、2022(R4)年から運用しています。
  2. 2023(R5)年より生活道路(住宅街の道路)の削り出し路線と積込路線を設定し、作業の効率化に向けた検証をおこなっています。

〈今後10年間の雪対策計画〉

札幌市は約10年周期で「雪対策計画」を策定してきました。

2025年7月からこれまでの「検討委員会」から札幌市の条例に基づく「札幌市雪対策審議会」を設置します。

審議会は約12名の有識者、市民(公募)、除雪協会等の代表者と市は事務局として、まちづくり政策局を中心に総務局、財政局、市民文化局、経済・観光局、建設局によって構成され、2026年度に「基本方針」を、2027年度には新たな「雪対策計画」づくりを進めることになっています。


〈今後の課題〉

  1. 札幌市の冬期間(12月~3月)を雪害の期間として新たな基本計画に明記する必要性
  2. 高齢の単身世帯が増えることを考慮した除雪計画
  3. 冬期間に発生する自然災害時の市民避難及び火災、救急車の出動を考慮した計画
  4. 効率化等による除雪予算の削減はしないこと
  5. 除雪に従事する人材及び企業の育成、支援の充実
  6. 市との情報共有、市民のマナー向上

私は、以上の具体的な項目内容を実現するために皆様と連携し全力を尽くす所存です。

2025年6月6日金曜日

新幹線札幌延伸工事の完成・開業の遅れと今後の課題について

皆様こんにちは。
札幌市議会議員ふじわら広昭です。

今回は北海道新幹線札幌延伸の開業時期の遅れと今後の課題についてです。


〈札幌延伸が確認された時期〉

北海道新幹線(新函館北斗~札幌間)は2015(H27)年1月の政府・与党申し合わせにおいて2030年度末の完成・開業を目指すことが確認されました。


〈新幹線工事と開業の流れ〉



〈北海道新幹線工事の特徴〉

新函館北斗~札幌間・約212㎞の内、トンネルの総延長距離は約169㎞(17箇所)と全体の約80%を占めています。
ちなみに東海道新幹線は約13%、東北新幹線が約34%、山陽新幹線は約50%です。

〈工事が遅れている主な原因〉

  • 羊蹄トンネル・・・岩塊が出現し工事が中断
  • 渡島トンネル・・・地質状況が悪く工事の設計変更
  • 札樽トンネル・・・掘削残土に含まれているヒ素など有害残土の埋立地確保等の難航による着工の遅れ

また、2024年度から建設労働者にも働き方改革が適用(週40時間・週休2日制等)になり作業時間の減少が主な原因に挙げられます。
トンネル工事が全体の80%(169㎞)を占める中で、山間部の事前調査は色々な制約があるにせよ、鉄道運輸機構は精度の高い調査を十分検討し実施したのか疑問です。


〈建設に必要な予算と費用の負担〉

現時点の新函館北斗~札幌間の工事実施計画認可額は当初想定より約6,500億円増の2兆3,159億円となっています。

  1. 全国新幹線鉄道整備法によって、建設費を負担する割合が定められており、JR北海道が線路使用料として鉄道運輸機構に支払う割合は66%、残り34%の2/3を国が1/3を北海道と沿線市町村が支払うことになっています。
  2. 北海道及び沿線市町村は負担額の90%を地方債の発行が認められており、さらに地方債の50%を国が交付税措置とすることになっています。
  3. 現時点で札幌市は約350億円の負担が見込まれています。

〈札幌延伸に伴う経済波及効果の見直し〉

北海道庁が2013(H25)年に作成した経済波及効果(2038年度末開業)の主な内容は次の通りです。
  1. 「建設投資効果」は総工事費1兆6,700億円から用地費1,223億円を除く実事業費1兆5,477億円をもとに推計されており、建設工事による「生産波及効果」は実事業費の約1.7倍にあたる約2兆5,000億円、「雇用創出効果」は197,082人が見込まれています。
  2. 2038年度開業時の東北・関東→道央、道南~道央の交流人口の見込みは、札幌延伸がなかった場合の683万人より約83万人増の766万人とされています。そのうち新幹線利用者は、航空機等からの転換などにより約236万人が見込まれています。
  3. しかし、完成・開業が2038年度末頃になることから、再度、経済波及効果を見直す必要があります。
〈道内のエリア別 経済波及効果〉


〈今後の課題〉

  1. 国内の人口減少により開業時期が遅くなる程、経済波及効果が小さくなることの対策
  2. 海外観光客の増加は世界経済の安定が必須
  3. 工期延長及び工事資材の高騰などによる建設費の増加に伴う沿線自治体の負担増対策
  4. 平行在来線廃止に伴うバス運転手の確保
  5. 札幌・新小樽・新倶知安・新八雲各駅前周辺再開発の遅れに対する対策
  6. 掘削残土の中に含まれるヒ素など要対策残土の受入地確保及び新たな処理方法の検討
  7. 上記を踏まえた新たな経済波及効果の作成
私はこれらの課題対策を札幌市や北海道・国に働きかけていく所存です。