2025年8月5日火曜日

札幌市内の文化財について

皆様こんにちは。
札幌市議会議員 ふじわら広昭です。

今回は札幌市内の文化財の現状についてです。

1〈札幌市内の文化財の指定・登録状況〉

(20253月時点)


2〈国及び札幌市の取り組み〉

文部科学省の外郭団体、文化庁は文化財保護法(1950年制定)により有形文化財、無形文化財、民俗文化財、記念物、文化的景観、伝統的建造物群の6分野の文化財を定めてきました。

その中で重要なものを指定・選定する国の指定制度を中心に、指定制度より緩やかな保護措置を講じる登録制度や、都道府県・市町村の条例等による文化財の地方指定/登録制度が設けられました。

これにより、国や都道府県・市町村が指定等を受けた個々の文化財を保護するための法的制限や助成措置等を講じることで、文化財の保存・活用が図られてきました。

しかし、少子高齢化・過疎化の影響による担い手の減少などから文化財を次世代に継承していくことが困難になりつつあり、特に地域や人々の暮らしの中で守り伝えられてきた「指定」等を受けていない文化財について、その価値が見いだされないまま失われつつあることが指摘されてきました。

これを改善するために、国の文化審議会が2007(H19)年に示した文化財の保護と文化財を活用したまちづくりの手段「歴史文化基本構想」がまとめられ、2018(H30)年に文化財保護法の改正、翌年4月に施行されています。

そして、基本構想の考え方を継承した文化財の保存・活用に関する市町村の計画「文化財保存活用地域計画」が規定されました。


3〈札幌市の第1期文化財保存活用計画〉

札幌市は、2020(R2)年2月に第1期札幌市文化財保存計画(2024年までの5年計画)を作成しました。そして、2023(R5)年度に「札幌市地域文化財認定制度」を創設し、未指定文化財となっている「地域文化財」候補の推薦を市民に呼びかけ、無形要素等、調査不足、調査結果の整理ができていない分類の存在が明らかになりました。

〈未指定文化財、現時点で2,239件〉

  1. 景観要素は1,785件:建築物、工作物、自然物、植物、公園、道、橋、遺跡など
  2. 空間要素は90件:地割、道筋、川筋など
  3. 有形要素は277件:用具、道具、食、料理、遺物、文献、美術工芸品など
  4. 無形要素は87件:民俗、伝承、技術、言葉、人物、団体など

〈札幌市の歴史文化の特性〉

  1. 先史から育まれた人々の暮らし
  2. 幕末に始まる諸村の開拓と開拓使による中心市街地の建設
  3. 1972年冬季オリンピックで変わった街の姿と市民の意識
  4. 都心と楽しむ季節の催し・風物詩
  5. 積雪寒冷地に成立した大都市
  6. 継承されるアイヌ文化

〈2023年度までに設定した関連文化財群〉

〔2020年度〕

  1. 札幌の都市軸となった慶応2年のインフラ「大友堀」
  2. 「開拓使」の遺産
  3. 札幌軟石4万年の旅

〔2021年度〕

  1. 縄文と札幌
  2. 「札幌冬季オリンピック」の遺産が伝える近代都市への歩み

〔2022年度〕

  1. 札幌の季節
  2. 雪や氷と共にある暮らし

4〈第2期札幌市文化財保存活用地域計画の概要〉

同計画は2025年度から2029年度までの新たな5年計画で、第1章から第7章で構成されています。

  • 第1章~目的と位置付け
  • 第2章~札幌市の概要
  • 第3章~札幌市の文化財
  • 第4章~札幌市の歴史文化
  • 第5章~文化財の保存・活用の方針
  • 第6章~文化財の保存・活用に関する取り組み
  • 第7章~札幌市の関連文化財群

* 第5章では第1期計画の評価検証をしています。

  1. 文化財関連施設利用者は計画前の2019年度の約53万人から2023年度は約57万人と新型コロナの発生期間と重なるものの全体数は増加しました。しかし、施設ごとでは丘珠縄文遺跡、旧札幌控訴院庁舎等減少したところが多いです。
  2. 市内文化財の中で時計台約98%、赤レンガ庁舎約97%、豊平館約72%の順に認知度は高いものの、それ以外の施設等の認知度が41%~4%と低くなっています。
  3. 文化財等を保存・活用する取り組みの大切さの割合は2022年度約87%と、2019年度の約91%より減少しています。
  4. 文化財等の継承の取り組みで必要なことは、価値や魅力を多くの人に知ってもらう情報発信の強化が52%になっています。
  5. イベントの取り組みでは文化財を巡るガイドツアーが約32%、文化財で行う音楽会が約30%の順になっています。

* 第6章の保存・活用に関する取り組みには、文化財の特性に応じた2つの考え方があります。

  1. 札幌の歴史を伝え、来訪者を魅了する都心エリアの文化財
  2.  市民のふるさと意識を育む各地域の文化財

具体的な取り組みの概要

  1. 「調査・把握」~文化財の掘り起こしを目的とした市民ワークショップの開催。札幌市地域文化財認定制度の継承
  2. 「共有・発信」~さっぽろれきぶんフェスの開催。文化財データベースの公開と維持管理
  3. 「保存・伝承」~文化財の効率的な維持・保全、防災・防犯対策、伝承支援
  4. 「活用」~関連文化財群とストーリーのPRと活用。郷土資料館支援の手法検討・実施
  5. 「連携・協働」~札幌市歴史文化のまちづくり推進協議会の運営
  6. 関係者と経済観光団体等の交流機会創出

計画推進の指標

  1. 「文化財等の保存・活用の取り組みが大切だ」と思う人の割合を、2023年度の約87%から2029年度には90%以上とする。
  2.  文化財等関連施設利用者(観覧者数)を、2023年度の約57万人から2029年度には約58万人とする。

〈今後の主な課題〉

  1. 文化財の価値や札幌の歴史文化の魅力を効果的に周知・広報するための情報発信
  2. 文化財の保存・活用に必要な予算の増額

私は、昨年12月の財政市民委員会の中で第1期計画の検証及び今後の第2期札幌市文化財保存活用計画(案)について質疑してきました。

また、これまでも今後の札幌のまちづくりには文化芸術を担う個人・団体及び現存する文化財を活用した「まちづくり」の必要性を質問・提言してきました。

今後も札幌市の取り組みを注視していきます。