2024年5月5日日曜日

樋口一葉との出会い

 皆様こんにちは札幌市議会議員ふじわら広昭です。
 今回は私と樋口一葉との出会いについてです。

 日銀と財務省が公表した新紙幣(1万円札、5千円札、千円札)の発行日が今年7月3日に近づくにつれ私は40年前のことを思い出しています。

 私は当時、国会議員の公設秘書になり1年が過ぎ自分でも仕事に少し余裕を感じるようになっていた頃、国会での新年度予算(案)審議を控え休日に議員と資料整理を終えたあと演劇鑑賞に誘われました。
 出し物は樋口一葉の「にごりえ」。

 近代化を急ぐ明治時代の社会の本流にのり切れず、岸辺によどむ濁り江に苦闘し、やがて人生の貴重な何かを諦めて現実と折り合いをつけていく人々の哀しさと生活の様子が今も強く印象に残っています。

 当時、日本が近代国家の仲間入りするため歩み出したとはいえ女性の地位は職業を問わず以前と全く変わっていませんでした。
 文学の世界ではなおさらであったと思います。

 ご承知のとおり、樋口一葉は子どもの頃から並みはずれた才能を持ちながら家庭の事情で進学できず、女性でありながら相続戸主として家族の生計のため作家になることを決意します。

 当時は戯文が流行していましたが、樋口一葉は「真情」を作品に反映させたいとの強い信念を持ち、お金のためなら何でも書くというタイプではなかったと言えます。

 こうした樋口一葉の気質と仕事ぶりは文学界にもあった“閨秀”作家との風評や女性軽視という差別を解消させていくことに繋がっていったと思います。

 樋口一葉は24歳の短い生涯をあわただしく走り去って行きましたが、決して哀しい女性の宿命だけ描いたのではなく、むしろ新しい時代の到来を一足早く生きたところがあったと言えます。

 逆行の中で懸命に生き、信念を貫いた樋口一葉との出会いを、私はこれからも大切にしたいと思います。