2025年3月20日木曜日

札幌市の下水道について

皆様こんにちは。
札幌市議会議員ふじわら広昭です。

今回は札幌市の下水道についてです。

今年1月に埼玉県八潮市で下水道管の損傷事故が発生しました。
いまだトラック運転手の安否が確認されておらず一日も早く発見されることを願っています。

今回の事故原因は現在も明らかになっていません。

国土交通省は今年3月18日、全国の自治体に口径2,000mm以上の下水道管を調査するよう通達を出しました。


【札幌市の下水道事業のあゆみ】

  1. 札幌市の下水道事業は1926(T15)年に雨水排除を主な目的にはじまりました。
  2. 1957(S32)年からは、急激な人口増加と都市の発展に伴う生活環境の悪化や河川の汚濁を背景として汚水処理に着手しました。
  3. 1972(S47)年の札幌冬季オリンピック開催を契機に集中的に整備を進め現在の普及率は99.8%に達しています。


【下水道管と処理施設の現状】

  1. 札幌市内の下水道管の総延長は8,316㎞です。
  2. 現在、埋設後50年を超える本管は1,411㎞(17%)あり、老朽化対策としてテレビカメラ等による管内調査で劣化状態を把握し修繕による延命化や改築を進めています。
  3. 10年後には埋設後50年を超える下水道本管が4,983㎞(60%)にまで急増します。
  4. 下水道本館と宅地内の排水設備を結ぶ取付管は約44万か所あり、これらを点検・調査し修繕しています。
  5. 札幌市はこれらの事業を年間約60㎞実施、内約50㎞は管更生工法上記(2)として実施しています。
  6. 市内には下水処理施設として水再生プラザ(下水処理場)10施設、ポンプ場16施設、スラッジセター(汚泥の焼却施設)2施設、洗浄センター2施設、合計30施設が稼働しています。


【市内の下水道管内径と延長距離】

  • 30mm以下 ・・・・・・ 5,936㎞
  • 500mm以下 ・・・・・・ 1,012㎞
  • 700mm以下 ・・・・・・ 409㎞
  • 1,000mm以下 ・・・・・・ 412㎞
  • 1,500mm以下 ・・・・・・ 263㎞
  • 2,000mm以下 ・・・・・・ 118㎞
  • 3,000mm以下 ・・・・・・ 143㎞
  • 3,000mm以上 ・・・・・・ 24㎞


【札幌市の下水道本管対策の考え方】

  • 下水道管内部の調査データを基に実施した劣化予測を踏まえ、約130年の使用を目指します。
  • 同管の重要度に応じた調査サイクルを定め、年間約210㎞を調査します。
  • 将来的に年間約60㎞の改築が必要との見込です。
  • 耐震性の高い下水道管や腐食に強い材質の管路へ改築します。


【下水道管内部の調査方法】

  • 直径1,000mm未満の管はテレビカメラを遠隔操作し行っています。
  • 直径1,000mm以上の管は作業員が管路内に入り目視で調査を行っています。


【市内の道路陥没件数】

  • 札幌市では下水道本管の破損に伴う大規模な道路陥没は起きていませんが、取付管の部分的な不具合に起因する陥没は年間約100~200件ほど発生し、その9割は市内に約18万か所ある「コンクリート製」の取付管が原因となっています。
  • この要因として、コンクリート製の取付管は「塩化ビニール製」に比べ接合部分の可動性が低く、また1981(S55)年以前に整備していることから劣化も進行し車両などの荷重がかかるズレなどの不具合が生じやすくなっています。


【今後の課題】

  • 下水道管直径1,000mm未満の調査は高圧洗浄機で洗浄後、遠隔操作による自走式小型カメラで不具合のある箇所を確認していますが、国は同調査を行う作業員の資格基準を定めていません。
  • このため業界が独自基準を定め資格取得者のみ高圧洗浄とテレビカメラの遠隔操作を行っていますが、市内及び全国的にも管更生作業を受注する業者の多くは業界の独自基準を取得していない現状を国や各自治体が改善する必要があります。
  • 水道水は浄水場から圧力をかけて送水しているため水道管には埋設の際ほとんど高低差がありませんが、下水道管は高低差を付けて埋設し、下水道処理場近くになるほど管の口径が大きくなっています。
  • 下水道を支える基礎を地質に合った対策と陥没箇所が地表から深い所でも捜索できる装置を国が民間企業と共同して開発する必要があります。


私は当面、国の通達に基づく全国及び札幌市の下水道内径2,000mm以上の実態調査の結果を注視すると共に、札幌市に対し管更生工事に参入する業者に業界の独自基準取得を応札条件にすることを全力で取組んでいきます。


2025年3月5日水曜日

札幌市消防局ヘリコプター2機体制について

皆様こんにちは。
札幌市議会議員 ふじわら広昭です。

今回は札幌市消防局の2機目のヘリコプター導入の課題についてです。

札幌市消防局は市内に10消防署と41の消防出張所が所在し約1,500人の職員が24時間・365日、交代で火災や救急等出動に対応しています。

主な機動力は消防関係車両221台中救急車両47台、ヘリコプター2機となっています。(内1機はリース契約)

札幌市の消防用ヘリコプターは1991(H3)年に運航を開始し、2009(H21)年からは新機体を加えた合計2機体で常に稼働できる体制を整え、空からも市民の安全と安心な生活を守ってきました。

2019(R元)年本州にヘリコプター1機を定期整備に出していた時に台風により被災し、機体が使用不能となってからは、運航体制を復旧すべく2機目導入に向けた調整を進め、昨年ようやく入札を実施したものの、入札実施後にメーカー代理店から入札・契約等審議委員会に苦情が申立てられた結果、札幌市は同委員会の提案を受け入れて機体調達を中止しました。


【札幌市に寄せられた主な苦情の内容】

現時点で運用最低外気温度がマイナス40℃でも安全に飛行できるエンジンと機体を仕様書で条件としたことでした。


【なぜ運用最低外気温度マイナス40℃を条件としたのか】

日本国内の消防用ヘリコプターの大半が富士山など高い山での捜索・救助等に対応できる性能を確保するためです。

また、札幌市消防局が現在所有するヘリコプターも運用最低外気温度マイナス40℃で飛行できる機種となっているためです。

同消防局のヘリコプターは札幌市内だけでなく要請があれば市外・道外にも出動する場合もあります。


【委員会の提案】

  1. 求める性能自体は、政府調達の協定に反しない
  2. 納入時までに性能を満たしていればよく、入札時点で実現できていないからといって入札参加を否定すべきではない

という内容でした。

委員会が指摘するように、入札時点で札幌市が求める性能を満たしていない事業者も入札に参加できるようになるのであれば、事前により多くの事業者から情報収集を行った上で、札幌市が求める性能を満たす手法等を仕様書に盛り込むなどして、調達の円滑化を図るべきと思います。

今回の消防用ヘリコプターの購入費用は約3,600万円以上となるためWTO(政府調達)案件となり、海外のメーカーも応札が可能となっています。

しかし、消防用ヘリコプターを製造している会社は国外を含めても数社しかなく、運用最低外気温度マイナス40℃対応の機種はさらに限られます。

例えば入札で落札したメーカーが運用最低外気温度マイナス40℃以下のエンジン性能等の機体を改良して指定された納入期日までに納入可能としたとしても、結果として納入できない、あるいは納入が大幅に遅れることになった場合は消防体制に大きな支障が生じると思います。

消防用ヘリコプターも法律に基づく整備点検で長期間使用できなくなりますので、最低2機体制を確保していく必要があります。

消防用ヘリコプターは札幌市の消防・救急活動に欠くことのできないものとなっており、また道内外における巨大地震など、大規模災害の発生リスクが高まっていることも踏まえると、消防用ヘリコプターに必要な機能が十分に備わっていないレンタル機で一時的に補完するのではなく、一刻も早い消防航空体制の復旧が必要です。

消防用ヘリコプターは負傷者や消防航空隊員の大切な命を乗せるものです。

私はこれからも、安全な運航に必要な仕様書を事業者にしっかり示した上で、必要な性能を備える機体を最短のスケジュールで調達するため、全力を尽くす所存です。