2025年5月20日火曜日

災害時の避難困難者対策について

皆様こんにちは。
札幌市議会議員ふじわら広昭です。

今回は災害時の避難困難者対策についてです。


【災害時の現状】

近年、日本国内では地震・豪雨災害等が多発しています。

これまで多くの災害が発生する中で、特に高齢者、病弱な人、障がい児・者、妊婦、乳幼児等がいる家庭等で一時避難場所に避難しづらい、できない人達が存在し、福祉避難場所のあり方等が大きな社会問題になっています。


【災害基本法の改正】

2021(R3)年5月に国会で災害基本法が改正され、避難がしづらい、できない人達の対策や介護・福祉サービス事業者にBCP(緊急事態に備えて事業を継続するための計画)が義務付けられました。


【改正のポイント】

今回の改正により災害発生時の避難行動、特に支援を要する方(要支援者)に係わる「個別避難計画」を概ね5年程度で作成することが市町村の努力義務になりました。


【個別避難計画とは】

高齢者や障がい者等の避難行動要支援者一人ひとりの状況に合わせて災害時に「誰が支援するのか」「どこに避難するのか」「避難する時にどのような配慮が必要となるのか」等を記載した個別の避難行動計画のことです。


【個別避難計画を作成する上での課題】

  1. 「個別避難計画」はほとんど市民に知られていません。
  2. 地域の支援者探しに懸念があります。
  3. 医療的ケアが必要な重度障がい児・者の避難場所の明確化が必要です。
  4. 福祉専門職員等の防災知識の不足。
  5. 地震や風水害等の各ハザードマップで災害危険度を事前に確認すること。
  6. 避難場所までの安全な避難路と自動車又は徒歩など確実な避難手段の確認作業について。
  7. 要支援者だけでなく支援者自身の命を守る計画の策定について。
  8. 優先度の高い要支援者は札幌市内に約1,800人います。例えば、①各ハザードマップのレッドゾーンに居住している人→②本人の要介護度が高い人→③支援者からの支援度が低い人から作成することが重要です。


【個別避難計画作成後の確認】

  1. 避難場所や避難路・手段の確保と避難支援等の実施に必要なことが記載されていることの確認。
  2. 可能な範囲で本人・家族・避難支援者・ケアマネージャー等と一緒に計画内容に沿った避難訓練を実施し、避難の実効性の確保と内容の改善に向けた取組を行うこと。

【介護保険及び福祉サービス事業者へのBCP義務付け】


目的

  1. 感染症や災害への対応力強化
  2. 業務継続に向けた取組の強化

感染症や災害が発生した場合であっても必要な介護サービスが継続的に提供できる体制を構築する観点から、全ての介護事業者を対象に業務継続に向けた計画等を策定し研修の実施、訓練の実施等を義務付け、3年間の経過措置期間を設けています。


【これまでの福祉避難場所の問題点】

  1. 福祉避難場所は2次避難場所のため、災害が発生してから開設までのあいだに数日を要すること。
  2. 一般避難場所に行けない認知症高齢者、知的精神障がい児・者、幼児等の受け入れ。
  3. 一時避難場所にて体調が悪くなった人の移送に関係機関との多大な調整・労力・時間を要していること。
  4. 対象となる人が、直接福祉避難場所に行けない現状。
  5. 福祉施設自体が福祉避難場所を開設できないのか。

【福祉避難場所の新たな方向性として】

  1. 高齢者・障がい児・者等の個別避難計画で福祉避難所施設との事前相談を行う研修の検討。
  2. 事前相談ができた方については直接避難を受け入れることの検討。
  3. 福祉避難所の負担軽減のため受け入れ方を限定した公示を行う検討。※例えば、○○○特別養護老人ホーム(高齢者限定)や○○○特別支援学校(障がい児・者限定)等。

現在、札幌市は災害時における「個別避難計画」の作成に向けた事業の民間委託契約がプロポーザル方式で行われています。

私はこれからも、札幌市の災害時の避難困難者対策について進捗状況を確認していく所存です。

2025年5月5日月曜日

新庁舎について

皆様こんにちは。
札幌市議会議員ふじわら広昭です。

今回は札幌市役所・新本庁舎の検討についてです。

1「現在の本庁舎の概要」

  1. 本庁舎は1969(S44)年5月12日に着工し、1971(S46)年10月31日に竣工。今年で54年目になります。
  2. 本庁舎は地下2階・地上19階・高さ78m・総床面積42,300㎡です。
  3. 当時の総工事費は約42億円です。
  4. 現在、外部(民間ビル)の賃借に年間約5億8,0000万円が支出されています。


2「札幌市役所本庁舎あり方検討会の設置と協議結果」

検討委員会は大学の教授や建築等の専門家5名で構成し、事務局は札幌市の関係部局及びコンサルタント会社です。

  1. 第1回検討委員会は2024年10月22日に開催され、現庁舎が抱えている課題を把握し、重要と考えられる課題について議論されました。
  2. 第2回検討委員会は2025年1月15日に開催され、本庁舎の整備パターン及び比較に必要となる視点を整理し、整備パターンごとの可否及び定性的な項目についての評価がおこなわれました。
  3. 第3回検討委員会は2025年3月12日に開催され、本庁舎の建替えか改修かの方針を決定していく上で必要な下記の提言をいただきました。


3「今後の庁舎のあり方について」

  1. 現庁舎の主な課題は「耐震性能」「防災拠点機能」「劣化状況」「設備更新状況」「狭あい度」「外部ビルへの分散」などが上げられています。
  2. これらの課題を解決するための整備方法を建替えパターンで2案、改修パターンで2案の合計4案について検討されました。
  3. 4案を比較するために評価項目を設定し評価がおこなわれました。
  4. 定性的な評価では「災害時機能継続」「行政サービスの向上」「移転の円滑化」等10項目を設定しました。
  5. 定量的な評価では「初期コスト」「整備完了までの工期」を設定しました。
  6. この結果、定性的な評価では「建替えパターンにして外部庁舎の集約」が最も評価の高い整備パターンとなりました。
  7. 定量的な評価では、短期的に比較すると改修パターンがコストは低いものの、長期的な視点で見ると建替えパターンに優位性があるとの結果となりました。


4「整備パターンの概要と特徴」


〈A. 建替えて外部の庁舎を集約〉

  • 別敷地に新本庁舎を建設した後に現庁舎及び別庁舎の機能を移転するパターン
  • 仮移転先は不要で、引越しは新庁舎完成後の1回のみ
  • 新庁舎面積約88,700㎡


〈B. 建替えるが外部の庁舎集約はしない〉

  • 別敷地に新本庁舎を建設した後に現庁舎のみの機能を移転、引越しは1回のみ
  • 外部庁舎(民間ビル)の賃料は継続発生する
  • 新庁舎面積約65,300㎡、現状の賃借面積8,900㎡が建替え後に約17,100㎡


〈C. 現庁舎改修と一部機能を移転新築〉

  • 規模を限定した新庁舎を別敷地に建設し議会及び防災拠点機能を新庁舎に移転
  • 仮移転先としても活用し現庁舎に移転
  • 完了後に外部庁舎を集約
  • 数フロアずつの改修のため、建物内引越しが複数回発生
  • 外部庁舎(民間ビル)の賃料は不要
  • 新庁舎面積約22,500㎡


〈D. 現庁舎改修〉

  • 仮移転によって現庁舎を空けたうえで、改修をおこなう
  • 数フロアずつの改修のため、建物内の引越しが複数回発生
  • 仮移転先として議会の本会議場及び各委員会の会議室の確保が発生
  • 外部庁舎(民間ビル)の賃料は継続発生
  • 現庁舎と同面積で42,300㎡、現状の賃借面積約8,900㎡


5「あり方検討委員会で出された主な意見」

  1. 災害時にもエレベーターを使用せず移動できる低層部に市の災害対策本部室の設置
  2. 市役所は市民の空間であり、利用しやすい空間づくりと、不足している機能を今後の庁舎に追加する検討の必要性について
  3. 市職員の人材確保の観点から職場環境・執務環境の整備及び省エネやエネルギーマネジメントの検討について
  4. DX・GXのソフト面に加え、ハード面の整備方針の検討を行うこと
  5. 建設資材の高騰など社会情勢を考慮しながら今後の検討をすること
  6. 現市役所本庁舎の跡地活用についての検討


6「今後の進め方と課題」

  1. 提言を基に、行政及び議会が十分に検討及び協議し新たな市役所本庁舎の場所と庁舎の規模・財源・建設手法(PFI等)について市民にていねいに説明し理解を得る努力が必要です。
  2. 各区役所・区民センター等の建替え計画も併せて検討する必要があります。
  3. 今後、基本方針・基本計画を作成し、基本設計・実施設計に入り工事期間は約4年程度必要であり、最低10年後の竣工に向けた議論と準備をしていかなければなりません。


私は皆さまにこうした検討状況をこれからも情報提供し、ご意見等を頂きながら札幌市や議会に皆様の考えを反映していくために全力を尽くす所存です。